今知りたい!プラントベースの定義について徹底解説 ヴィーガンとの違いは?
定員200名のWEBカンファレンスに250名が押し寄せ大変好評だった講演内容を書き起こしました。
ヴィーガンフードとの違いは?プラントベースフードの視点とは?に徹底的にお答えします!
ベジタリアン・ヴィーガンに関心のある方なら最近よく耳にする言葉、「プラントベース」。
プラントという言葉からなんとなく「植物性?」と感覚的に受け取っている方が多いのでは無いでしょうか。
今回、日本のプラントベース業界で第一人者として情報発信を行っているグリーンカルチャー代表の金田がプラントベースフードについて解説します。それでは早速見ていきましょう。
プラントベースフードの定義とは
以下定義を示します。
プラントベースフードとは、全て植物由来原料から作られた食品、 またその殆ど大部分が植物由来原料から作られた食品であり、 鉱物、添加物、乳・卵を含む場合もある。一方、その大部分が植物由来原料であっても畜肉及びそのエキス類、また魚介及びそのエキス類を含有するものは含まない。
日本では、どんな基準に基づいてプラントベースと言うかについて殆ど知られていませんでした。
そこで海外の文献や事例からプラントベースフードに関する定義を徹底調査しました。
プラントベースとヴィーガンの違いを考える
驚かれるかもしれませんが、プラントベースフードはイコール、ヴィーガンフードでは無いという点についてまず違いを認識することが必要です。少々逆説的ですが、もしプラントベースとヴィーガンが全く同じ意味であれば、二つ言葉がある必要はありません。つまりそれぞれ使っている人がその言葉に求める意味合いが異なるからこそ、それらが同時に存在することになります。
こちらに図示してみました。見ていただくと、「動物をできるだけ摂らない」ことにフォーカスして作った食品をヴィーガンフードといいます。一方、プラントベースフードは植物をより積極的に摂っていこうというコンセプトに基づいて作った食品のことを指しています。つまり、両者の中で「動物性を含まない」エリアのみ共通しますが、それ以外は完全一致しているわけでは無いのですね。このようなフォーカスの違いにより、プラントベースとヴィーガンで使われる原材料に違いが生ずることになります。
例えば、プラントベースフードでは使われることがある乳・卵製品やパーム油などがその例です。
ヴィーガンの場合、動物をできるだけ摂らない(後述する脱動物搾取)という観点であることから乳・卵製品を摂らないのは理解できます。一方、プラントベースは、動物性の排除よりも植物性を摂り入れていくことに主眼があるため乳卵の使用は一般的に受け入れられています。パーム油は生産する過程で森林破壊により、オランウータンなど動物を傷つけるとされ、ヴィーガンでは好まない方もいます(一方全てのパーム油が動物搾取につながるとは一概に言えないため議論が残りますが別トピックなのでここでは触れません)。
プラントベースの定義からパーム油を見た場合、「パーム油=植物性の油脂」であるため、さして何の話題にもなりません。このように両者は主眼が異なることからイコールではなく、一部の製品においては両者が合致する箇所もあるという認識を示しています。
プラントベースとヴィーガン それぞれが目指すもの…
プラントベースとヴィーガンの違い、つまり「植物をより積極的に摂ろう」と「動物をできるだけ摂らない」ことの違いはどこから生じるのか。それは、双方の裏にある目的の違いを知ることで解釈が容易になります。それを示したのが以下の図です。
ヴィーガンは一般的に動物を搾取しない・殺生しない・無駄に命を殺さないとする宗教の教義、総じていえば「脱動物搾取」という精神的目標達成にフォーカスが当てられています。一方、プラントベースは個人の健康増進・疾病予防など直接的、身体的目標達成にフォーカスが当てられています。実際英語圏のサイトで「Why plant-based food…」などと調べると、そのほとんどすべてが健康的な理由から説明が試みられていることからも明らかです。
例えば、疾病予防・動脈硬化予防・老化の減退・体質改善など医学的アプローチはもとより、健康的に痩せる、持久力が上がる、スポーツで良い成果が出るといったアスリート向けのアプローチも見られますが、総じてプラントベースフードを食べることで自分に身体的な実益が生ずることを理由としてプラントベースが摂取されています。
なお環境保護に関しては、精神的目的ともとらえられつつ中長期的には身体的改善にもつながる事から、ここでは両者の中間として位置付けています。
海外の文献から調べたプラントベースの定義
最初にご紹介したプラントベースフードの定義ですが、実は様々な海外の文献調査に基づいています。ここではプラントベースという言葉の定義へのアプローチ方法について以下の通り開示した上で、出てきた結果を開示することに致します。
プラントベース(Plant-based)を定義づけするための二つのアプローチ
- 英語圏、米語圏の辞書から純粋な言葉の定義を辞書で調べる
- 英語圏、米語圏の専門家・専門機関による定義を調べる
辞書で言葉の定義を調べるのは近道です。英国と米国の辞書を引くと上記のようにPlant-based(プラントベース)はentirely of plants(=すべて植物)、または mainly of plants (=ほとんど植物)とされ、100%植物であるという言い方を避けています。つまり英国米国の辞書ともに、植物原料以外の存在を示唆しているのが新たに発見した点になります。
次に英国と米国の栄養学の専門家らがどのようにプラントベースを示しているのかを見てみます。ベジタリアン発祥のイギリスでプラントベースを発信しているイギリス栄養士学会によるとwith few or no animal productsと言っておりfewというのがキーワードです。fewは少量、ほとんどないといった意味だと思いますが、裏を返せば少量の動物性原材料の混入を認める解釈をしているわけです。
さらに一般的なプラントベースダイエットについて、ハーバードメディカルスクールの教授によると、milk or eggs, a pescatarian diet, which is largely vegetarian but also includes seafoodといったように、魚を食べるぺスカタリアンもプラントベースの解釈に含めて解説しています。これは目新しい発見です。調査結果をまとめると、辞書では植物原料以外の可能性について示唆しており、専門家らは一部動物性のものを使う解釈を示していたという事になります。ここで再度プラントベースフードの定義を掲載します。
プラントベースフードとは、全て植物由来原料から作られた食品、 またその殆ど大部分が植物由来原料から作られた食品であり、 鉱物、添加物、乳・卵を含む場合もある。一方、その大部分が植物由来原料であっても畜肉及びそのエキス類、また魚介及びそのエキス類を含有するものは含まない。
「植物原料以外」に鉱物を示していますが、こちらは主に塩そして炭酸カルシウム等です。同様に添加物を定義に含めていますが、海外の“プラントベースフード”と称される商品の原材料を見る限り通常添加物が使われています。そのためプラントベース=添加物不使用とは到底言えず、その使用が認められていると捉えました。
一方、ここが重要ですが、魚介・魚介エキス、畜肉・畜肉エキスに関しては逆に含まないと定義しています。この理由は、実際“プラントベースフード”として売られている海外の商品で、魚介畜肉が入ってるものを一切見たことがありません。ゼロです。つまり供給側のビジネスの実態として、魚介畜肉を添加しつつ、プラントベースを冠して売っているものは存在しないことから上記を付け加えています。(たとえそのようなものがあっても、例外と言いますか議論を呼ぶことは間違いないでしょう)
後半に続く…。(執筆中)
Author:金田 郷史(グリーンカルチャー代表取締役)
東京都葛飾区生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。米De Anza College Liberal Arts経営学専攻準学士。高校卒業後シリコン バレーへ留学。在米中、食の多様性へ感銘を受け、日本で の植物性食品普及を決意。2011年、植物性食品専門企業 「グリーンカルチャー株式会社」を創業。会社経営の傍ら日本におけるプラントベースの仕掛け人として各種勉強会での講演や雑誌寄稿また議員連盟等で情報提供を行っている。
Editor:岩田絵弥曄(Vege for peace主宰)
内閣官房オリパラ基本方針推進調査 ホストタウンアドバイザー
経済産業省創設 おもてなし規格認証 現地調査員(認証機関 一般社団法人OSTi)。みんなが食べられるヘルシーな食・ヴィーガン のフードアナリストとして活躍。地域のベジの名店からミシュラン掲載店まで幅広く案内することで定評がある。全国初のヴィーガン関連コロナ支援プロジェクト「Vege for peace(ベジフォーピース)」を主宰。